この きこえのリハビリは、早くても数週間、高齢者では長くかかることが多くなり、3ヶ月以上かかることもあります。この期間中には、補聴器の調整を段階的に変化させる必要があります。
そこには適切で繊細な補聴器の調整が鍵となります。
このように、補聴器の第一印象はやかましいと感じても、適切な調整さえあれば、リハビリによって次第に変わっていきますので安心してください。
補聴器
「補聴器はうるさいだけ」「音は聞こえても言葉が分からない」…
このような印象から、補聴器をあきらめてしまう方、購入しても使わなくなった方がたくさんいらっしゃいます。ここには、理由があります。
メガネと異なり、補聴器はすぐに使いこなせるものではないのです。

脳は、ひそかに聞こえの感度調整を行っています。電車の中のようなやかましい環境では感度を下げますので、イヤホンで大音量の音楽を聴いてもうるさいと感じません。一方、深夜のように静かになると、少しでも音を聞き取ろうと脳は音に対する感度を上げます。難聴がある場合、ずっと静かな環境に置かれるので、音への感度が上がっており、補聴器のつけ始めにうるさく感じます。そして長年の難聴があると錆びついてしまうようで、この感度の調節が上手く働きません。
また、脳はひそかに情報を無意識に取捨選択しており、自分にとって必要な音を意識にあげる、という働きをします。これを「カクテルパーティ効果」といい、ザワザワした環境で会話ができるのは、この働きのおかげです。しかし、補聴器により聞こえの環境が大きく変わると、この機能がすぐには働きません。そのため、どの音が必要か脳は識別できず、決して大きな音ではない様々な音(例えば食器の音や水道の音)をやかましいと感じるのです。つまり、音に過敏な状態となります。
とは言え、安心してください。補聴器をつけて長い時間過ごしていると、脳の神経回路は次第に組み換わっていきます。そして、ほとんどの方は解決します。これを当院では、「聴覚過敏の壁」を乗り越える「きこえのリハビリテーション」と呼んでいます。以下のポイントが大切です。

この きこえのリハビリは、早くても数週間、高齢者では長くかかることが多くなり、3ヶ月以上かかることもあります。この期間中には、補聴器の調整を段階的に変化させる必要があります。
そこには適切で繊細な補聴器の調整が鍵となります。
このように、補聴器の第一印象はやかましいと感じても、適切な調整さえあれば、リハビリによって次第に変わっていきますので安心してください。

日本での補聴器購入者の満足度が欧米と比べて2/3というデータがあります。(JapanTrak2022)実際、補聴器を購入したけれども満足できないと、病院に来られる方は尽きません。
適切な補聴器フィッティングがされていないからです。
補聴器フィッティングとは、補聴器をその方の耳や聴力にあった適切な状態(適合)にすることです。つまり、専門性の高い繊細な調整だけではなく、機器の選択、生活状況に応じた提案など、その方にあった補聴器にすること。この補聴器フィッティングは購入後も続きます。
調整を進めるには補聴器をつけた状態での測定(効果測定)が必要です。
例えば、次のようなことを調べます。
ところが、日本ではあまり行われていない実情があります。補聴器に満足していない場合、補聴器をつけた状態での測定を受けましたか、これは基本なのです。
補聴器の音づくりには専門の知識や技術を持つ調整者が欠かせません。
認定補聴器技能者や言語聴覚士という資格があります。これらの専門家に補聴器の調整をゆだねることが必要です。ただし、調整をすれば良いというわけではありません。調整の前に、医学的に耳や聞こえの状態を正確に把握することは必要ですし、補聴器が適合しているかどうかを判断するのも医療者が望ましいと考えます。
そこで、医療連携による補聴器フィッティングという流れを勧めています。
補聴器にくわしい医療者 つまり 補聴器相談医 や 聴覚を専門とする言語聴覚士、そして 認定補聴器技能者 が連携を深めて対応するという医療連携です。
補聴器相談医とは、補聴器診療に関わる、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が定めた資格です。
聞こえづらいと感じた時、まずは耳鼻咽喉科の補聴器相談医を受診しましょう。
補聴器相談医は、補聴器の活用または試す価値があると判断すれば情報提供書を作成します。
そして、認定補聴器専門店(販売店)あるいは補聴器専門外来を案内します。この両者は、補聴器の選択や調整に必要な設備を備えています。つまり、先ほどの効果測定を行うことができます。認定補聴器専門店には認定補聴器技能者が在籍しています。貸し出し試聴がお勧めです。調整が進むと、効果測定の結果が補聴器相談医に提出され、評価される流れとなります。
補聴器を活用するには、繊細な調整とリハビリが必要なことを述べました。補聴器のフィッティングは簡単ではないからです。一般的に、高齢になればなるほど難渋します。そこで、補聴器を始めるタイミングは「その方の生活において聞こえづらさ」を感じた時であり、聴力検査の数値によりません。先延ばしは、脳の神経回路の組み替えという点で調整の難易度が上がります。また騒音下での聴き取りは、両耳で聞くことに価値が大きいことがわかってきました。そして、高額な機種でなくても効果はあります。補聴器の満足度は、価格ではなくフィッティングで決まります。

補聴器に満足されていない場合、その理由を探る必要があります。
その大半は解決できますので、あきらめずに最寄りの補聴器専門外来で相談しましょう。
それともう一つ… ご本人の補聴器に対する前向きな 姿勢がとても大切です。
ご家族のサポートもよろしくお願いします。
日本赤十字社愛知医療センター
名古屋第一病院 耳鼻咽喉科
柘植 勇人
以上は、補聴器フォーラム東海の際に配付している資料です。
時間をかけて、言語聴覚士と一緒に作り上げた書面です。
この内容をご理解頂けましたら、補聴器購入でつまずくことを防ぐことができると思います。
さて、当院では、医療連携を前提にした補聴器外来を実践しています。
原則2ヶ月間の試聴期間を設定し、満足されてから購入する流れとなります。
補聴器を試聴する場合にはチェックリストを説明させて頂きます。
TOP